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脳を学ぶ

現代の脳科学は医療関係を中心に発展してきました。くも膜下出血・脳梗塞など外科 的な療法を必要とするもの、アルツハイマー病に代表される認知症は化学療法が施されています。そして若年性あるいは加齢による認知症に対応 した脳を活性化させる方法はよくあります。
 しかしながら健常者の青少年にその脳科学を応用し学習の効率を図って指導しているという話はあまり耳にしません。

仁科研では器官組織に留まらず化学的な領域にまで記憶のメカニズムを研究し、その科学的知識を応用、子供たちの学業に役立てる方法を確立しました。子供たち本人に 今脳はどのような働きをしているのか具体的に理解させながら学習を進めています。

一つの神経細胞から周りの神経細胞へとシナプス結合していくことが記憶のメカニズムの基本です。このシナプスの数が増えること、シナプス自体が太く強固なものになることが長期記憶へとつながります。また離れた神経細胞からシナプスが伸びてきて新たな回路ができこのことが複雑な意味をもった記憶につながります。その記憶を頼りに人間は考察しています。したがいまして脳内においてシナプスが自由に手を伸ばす空間が要求されます。

 人類の脳は出産時に大量の神経細胞を失います。その後も神経細胞は減少を続けていきますが脳の容積は成人になるまで拡大して行きます。そのため、人類の脳細胞の密度はチンパンジーの半分以下しかありません。発達性読字障害の人の脳の解剖結果、言語野のある左脳が統計的に大きいという報告があります。その原因の一つが、胎児から出生時の細胞死のはたらきが弱かったためです。ニューロンの軸索がショートカットするための通り道が空いていなかったため、ひっかかって絡まってしまいさまざまな回路が作れず、それ以上、前進できないから、読字能力が発達できなかったのです。余分なニューロンのために、回路(ループ)を小さくすることができなかったのです。

 動物の思考は言語を持ち合わせていないため映像をもって行われていると考えられています。そして動物の左右の脳は人間で言う右脳の構造だけになっています。それに対し人間の脳は左脳を駆使し言語を使い物事を考えています。その左脳は右脳よりおよそ一%だけ軽く、側脳室は左脳の方が長くなっています。これは、左脳の方がニューロンが多く減少し、それにより左脳は言語を獲得しやすいと構造になったのです。また、海馬の神経幹細胞は脳室に面した部分にあります。 

  もともと動物の思考ループは左右ともに空間思考が強くなっています。人類は、言語にさらされることにより言語思考が強化され、左脳に言語思考のループが作られた結果、左脳にあった空間思考ループの一部が右脳へ追い出されました。

 年老いていくにしたがい神経細胞の数は減っていきます。しかし神経細胞の数が脳の働きの良し悪しを決定することはありません。例えば会社において、二十代、三十代はまだ下っ端で よくミスをし上司に叱られています。また判断力もないと見なされ 重要なことは四十代五十代が決定しています。さらに重要な会社としての意思決定は概ね六十代に任されています。職人の技能 においても三十代までは経験も浅く技能が乏しく見られてしまいます。逆にその技能は六十代七十代になっても衰えるどころか磨きがかかってきます。これは数が減った神経細胞間を自由にシナプス結合ができ考察時に幅広い視野のもとで判断できるためです。

 このように人間は他の動物と異なり左脳が発達してきました。左脳を鍛えることが学習においても重要です。

「短期記憶」と「長期記憶」

短期記憶:
 性質が異なる「ワーキングメモリー」

長期記憶:
 「繰り返し学習記憶」と、「一回の経験記憶」
 「陳述記憶」と「非陳述記憶」
 「意味記憶」と「エピソード記憶」

 

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